四季 春  森博嗣(168)

四季 春 (講談社文庫)

四季 春 (講談社文庫)

 四季のために作られたスピンオフ作品みたいになっている。病院での密室殺人事件の犯人は四季(自分)。
 主な語り手は四季の一人格「其志雄」で、彼が四季について語るのが、基本的な進行。だが、四季は人格が複数に分裂している上に、それぞれが四季の肉体の主導権を有しているため、視点がブレているように感じられるつくり。
 しかも、四季の中に存在している其志雄は同名の兄が現実にも存在しているようで分かりにくい。こういった多くの点で読者を混乱させる試みが見られる。
 ちなみに四季の天才っぷりはあんまり感じられない。