赤頭巾ちゃん気をつけて 庄司薫(9)

赤頭巾ちゃん気をつけて (中公文庫)

赤頭巾ちゃん気をつけて (中公文庫)

 大学紛争や東大入試中止だとかそう言った時代を感じさせる部分に一つもリアリティを感じられない世代として読んでみるとやはり、日本版キャッチャー・イン・ザ・ライになるんですかね……。
 何にしろもうあらゆることがかけ離れすぎてしまっていて……先ずこんな高校生(主人公=庄司薫くん)が既に絶滅してるんだね。自分の立場に即して言うと、今の高校生は庄司くんのように自分と社会をリアルに結びつけて考えることができません。というのは、別に今の高校生の程度が低いとかそういうわけではなくて、単に社会が複雑化し過ぎたこと(加えて、メディアの発達で社会の範囲が否応なくイコール全世界まで広がったこと=余り膨大で手がつけられない)でしょう、多分。あとは価値観の多様化、と言うと陳腐だけれど、むしろ価値観が普通と異なっていても(身勝手だろうがなんだろうが)「生存できる社会」になってしまったことが大きいのかなー。
 やっぱクライマックスのカナリアの子とやりとりする場面が好きだなー。そういう無根拠な善意(を無根拠に信じられること)で満ち満ちていた世の中なんだなー。