ブルースカイ 桜庭一樹(8)

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

 文章が嫌に平易だとか、ロジックが苦手なのにミステリーをやったりするとか、色々言われてる桜庭一樹ですが、私は結構好きです。
 「少女」を考えるための三つの「箱庭」――魔女狩り時代のドイツ、近未来のシンガポール、そして現代の高校――が青井ソラ(←何かこれ凄い名前ですね。冗談みたいで冗談じゃなくて、しかも伏線)という共通点と共に(というか青井ソラ、ひいては少女性という観念、解答を導くために)語られるわけですが、いかんせん煮え切らない習作という印象が最後まで拭えませんでした。これだけバーチャルの世界で「少女」が(いわゆる美少女として)これまでの社会よりも圧倒的、爆発的にその概念を拡張している中で、何だか色々と書くべきことがあったのかもしれませんが、そういうことは既に多くの作家がチャレンジしてしまっていると思います。冲方丁とか割とそうじゃないですか?(と思ったけれど「マルドゥック・スクランブル」は少女の社会的位置、役割というよりも、むしろ自我の拡大に関する部分に比重を与えられた物語ですね)
 まあともかくそんな感じで、ストーリーの面白みも少なく(「少女」……→魔女狩り、という安易さ辺りから推して知るべしといったところですが)、設定も消化しきれず、あんまり読者を楽しませる工夫が見られないように感じられるので、この作品は後に「少女七竈と七人の可愛そうな大人」なんかを創るために必要なプロセスの一つだったのだろうと思うことにしました。