零崎曲識の人間人間 西尾維新(161)

零崎曲識の人間人間 (講談社ノベルス)

零崎曲識の人間人間 (講談社ノベルス)

 音楽家・零崎曲識の戦歴について書いた四短編。しかし、やはりキャラものであって、ストーリーは無きに等しい。グランドピアノ程度の音階が出せる黒色のマラカス「少女趣味(ボルトキープ)」を扱って、音による相手の精神支配と音の衝撃波による物理攻撃をおこなうのだが、まあそれはどうでもいい。特にトリックにもなっていない。このあたりは、西尾のけれん味溢れる表現や構成のおかげでギリギリ成り立っているような感じだ。
 肝心のキャラクターも基本的には前作頼みの部分が多い。もちろん、戯言遣いがいなければ、存在し得なかったシリーズなので仕方ないところもあるだろうが、それを一番の大仕掛けに持ってくるのはどうだろうか。似たようなことは不気味で素朴な囲われた世界にもあったと思う(病院坂黒猫のことだ)。
 まあ、それまでの人生「悪くない」「零崎を始めるのも悪くない」と言っていた人が最後に「いい!」といいながら死ねてよかったねと言う話。
 西尾のような即物的な人物の書き方でも、一人の人生に絞って時系列を調整しながら書けば、意外にも人物の生死で感動を作れるのだなと学習した。
 やはり、殺人鬼の一族など子供の遊び感覚で皆殺しにされるのが宿命なのか。