大学の話をしましょうか 森博嗣(159)大学の話をしましょうか―最高学府のデバイスとポテンシャル (中公新書ラクレ)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2005/10メディア: 新書購入: 12人 クリック: 74回この商品を含むブログ (161件) を見る

 こういう本を読むと森博嗣の頭の良さが分かる。小説なんか書いていないで、こういう本ばかり書いていて欲しい。採算が取れないだろうが。

 ……人間に求められる能力は、きちんと気配りができる、次にどんなトラブルが起こるか予想ができる、というような、ようするに機械では思いつけないような、発想、着眼、想像、といったものではないでしょうか。

 図面だけでない、理論と計算だけでもない要因が、実際にものを作ると関わってくるのです。思い通りにいかないものだ、ということを知っているかどうか、が大きいのです。

 別に細々としたことを正確に覚えなくても、だいたいどんなものがあって、どんな関係にあるのかをうっすら把握していれば十分なのです。必要なといきに。そのうっすらとした関係を瞬時に思い出せれば、それでOK。

 ……人間の知的能力は、問題に答えることではなく、問題を見つけることである、というのが、僕の考えです。

 ……小説というのは、確かなコンテンツがあるわけでもなく、データもありません。書きながら大部分が作られていきます。書いているうちに、世界が構築されていきます。読んでいる人は、小説を読むことで、その背景にある世界の大きさを感じるわけですけれど、しかし、実際にはそれは作者の頭の中にぼんやりと一時的に存在しただけのもので、コンテンツとして具体的な実体・情報があるわけではありません。つまり、一しかないものを十で書くのが小説ですね。広がりを感じさせ、予感させる、それが小説の力です。(中略)いずれも、相手は読むことによって、コンテンツを想像するわけですから、伝達が巧みであることは重要です。