ある閉ざされた雪の山荘で 東野圭吾(158)

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

 ある劇団の出演候補者たちが監督の呼び出しで雪山の山荘に集められる。そこで殺人事件の設定にしたがって劇をやれを命じられる話。
 三重構造になっている話。候補者達を呼び出したのは実は、彼らのうちの何人かと揉めて半身不随になった元劇団員の女。この女が候補者の一人と共謀して、候補者達に殺人劇を演じていると思わせて、本当に恨み相手たちを殺してしまおうと画策する(二重構造)。
 だが、人殺しを思いとどまった共謀者は恨み相手たちにこの策を話し、「殺人劇の最中に本当に死んでしまった」かのように演じて欲しいと持ちかける。実際、誰も死なない。これによって三重構造。
 「神の視点」と主人公格の「独白視点(一人称)」が交互に配された文章構造になっているが、この「神の視点」は実は、半身付随女の視点である。山荘の壁に細工を施して、多くの部屋を見通せる隠し部屋をつくり、そこに潜んで、皆の様子を観察し続けていた。