テロリストのパラソル 藤原伊織(157)

テロリストのパラソル (講談社文庫)

テロリストのパラソル (講談社文庫)

「思うんだけど、われわれが相手にまわしていたのは、権力やスターリニストを超えたものだって気がしてきたんだ。いわゆる体制の問題じゃない。もちろん、イデオロギーですらない。それは、この世界の悪意なんだ。この世界が存在するための必要成分でさえある悪意。空気みたいにね。その得体の知れないものは、ぼくらがなにをやろうと無傷で生き残っている。これからも生き残っていくだろう。」

「そうさ。人間は陳腐への階段を降りていく運命にあるんだよ」

 アル中のバーテンが主人公。東大生だった男はかつての全共闘闘争の終わりに、ふとした事故から友人の作った爆弾を爆発させて、指名手配の身になり、二十二年もの間、日陰に隠れるように暮らしていた。
 昼間の新宿中央公園で、いつものように安酒をあおっているとき、死傷者数十名にも及ぶ爆弾テロ事件に巻き込まれてしまう。運よく、無事だった主人公だが、事件現場に自分の指紋のついたボトルを置いてきたことに気付く……。
 というところから始まる話。ヤクザが絡み、大企業が絡み、大共闘時代の過去が絡み、様々な人物の思惑が入り乱れながら、最終的にかつての親友の元に辿り着くことになる。
 もう一度読んだ方がいいかもしれない。