ラッシュライフ 伊坂幸太郎(155)

ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)

 ところどころがリンクする群像劇。全てを手に入れる力を持つ資産家→知的な泥棒→新興宗教の教祖を解体しようとする絵描きの信者→お互いの配偶者を殺す計画を立てる精神科医とサッカー選手→リストラされた中年と老犬→資産家……と出来事の関係性がループするように配慮されている。
 それぞれの小事件が次の小事件を引き起こすというつくり。この事件同士の関与の仕方が非常に巧み。それぞれの事件は駅前に立って、好きな言葉を欠かせるアンケートをとっている白人留学生と、エッシャー展でまとまっている。
 伊坂の深いんだかこけおどしなのか判然としない奇妙な小話は面白い。この人の想像力は並大抵のものではない。
 豊潤な人生とはなにか。