捩れ屋敷の利鈍 森博嗣(150)

 

捩れ屋敷の利鈍 (講談社文庫)

捩れ屋敷の利鈍 (講談社文庫)

「ええ。今まで、どうして出会わなかったんでしょう、僕たち」
「確率的に順当だと思います」

 密室本。西之園萌絵と保呂草潤平が対決するという、完全なファンサービスの一冊。
 捩れ屋敷を所有する富豪家のいざこざに鉢合わせた保呂草が上手い具合に漁夫の利を取り、萌絵は萌絵で、殺人の犯人が保呂草であると、下手な推理をめぐらせて事件をかき回すというつくり。
 保呂草が盗んだのは、エンジェル・マヌーヴァという貴重な短剣を装飾していた「銀の鎖」。これが、一つの銀から編み出されており、鎖なのに継ぎ目が存在しないという大変に貴重なものらしい。こいつを盗むために、エンジェル・マヌーヴァを飾っていた柱をマヌーヴァごと上塗りして、そっちを盗んだかのように見せかけたりした。更に、鎖の一部がぶっ壊れて価値が下がっていたため、その部分だけ削ったりもした。あと、富豪の孫を学校に送り迎えする車に盗んだ品をくっつけて運び屋として使ったりもした(保呂草のよくやるトリック)。