ライン 村上龍(275)

ライン 幻冬舎文庫

ライン 幻冬舎文庫

 受話器のコードを見るだけで、ライン上で交わされる会話が聞こえる女がいるという。半殺しにされたSM嬢、男の暴力から逃れられない看護婦、IQ170のウエイター、恋人を殺したキャリアウーマン。男女の性とプライドとトラウマが、次々に現代日本の光と闇に溶けていく。圧倒的な筆力で現在のコミュニケーションを描いたベストセラー。

 感情をからだの内部に閉じ込める。それを子どもの頃から続けていると、表に出そうとしても、そのための回路がわからなくてできない。

 酒が強い、というわけではなく、どうやっても自意識が消えてくれなかったのだ。

 明美は、若くて貧乏で気の弱いブスな女の子を拾ってきては捨てることで、自分の不運を背負わせることができると信じていた。

 最優先のものが見つかれば、人生に目標ができる、目標ができれば、生きるのに必要な知恵が生まれる。

 何かが全部違っていた、人間というのはいろいろな自分があるんだと思う、接している他人に応じて人間は人格が微妙に変わる、本当は会う人ごとに別の人間になっているんだと思う、